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2017年4月27日 (木)

十二 和声の授業

 ソルフェージュの授業が免除になった後は、その後順調に他の学科も免除となった。

 だけどそれまでの間はしっかり授業に出なければならなかった。特に音楽史の時間は、確か連続二時間くらいの授業。もう、フランス語はサッパリわからないし、最初は頑張って頭を働かせていても、後半は寝るしかなかった。でも周りのベルギー人たちは、皆それぞれ楽しそうにディスカッションをしていたのが印象的であった。

 そう、日本の大学の授業は、先生が教壇に立ち、学生たちはそれを聞く、というスタイルがほとんどだったと思うけど、さすがはウワサ通りの欧州。先生が学生を指名する前にもう、口々に皆発言しあっている。ものすごい積極性である。

 そしてその中に、フランスから渡ってきた日本人の女の子がいた。彼女もコンセルヴァトワールの一年目だったのだけれど、もうすでにフランス語はペラペラで、ベルギー人の友達に囲まれていた。何でも、まずは語学ができなければと思い、フランスで語学留学をしてからベルギーの音楽院に移ってきたと言う。彼女はちょっと変わっていたし、日本人とは一切かかわりを持たなかったから悪口を言う子もいたけれど、私は感心してしまった。そうかぁ、そういうやりかたもあるのかと。フランス語が喋れなかった私は羨ましく思ったのである。どうしても早く喋れるようになりたいと、強く強く心に思った。

 しかし大勢の学生たちと一緒に出る授業は辛かったが、マンツーマンで先生と向き合う個人レッスンは楽しかった。ピアノの実技ももちろんそうだけど、和声学がそれである。和声学とは、日本でも勉強したけれど、ある決まりに基づいて和声進行を作っていくというものであり、作曲科はもちろんのこと、ピアノ科の我々も必須で学ばなければならない。でも日本の和声は退屈で仕方がなかった。多分、ほとんどの学生たちの悩みの種だったと思う。決まりの中で作ってたって、つまんないのだ。出来た和声を聴いても、ふう〜ん、って感じだったし、苦痛でしかない授業だった。それなのに。

 フランス和声は違った。日本式和声と違うところは、あのつまんない、その調を基準とした一度、四度、五度、などで考えさせることがなくて、この音とこの音で作りなさい、といった表記が数字で示されている。レベルが上がってくるにつれ難しくなっていくのだけれど、作り終えた一曲が実に美しいのである。一曲仕上げるにはもう作曲並みで、試験は一日、弁当持参で一人一部屋に缶詰にさせられたりするのだが、出来上がった時の嬉しさはハンパない。何度も弾いて、「綺麗!」なんて酔っちゃったりする。楽し過ぎた。

 授業はピアノ一台を使ったマンツーマンで、やってきた宿題を見てもらいながら、先生の分析が入る。

「ここはこの和声を使った方がいいよ、カオル。」

「どうしてですか?」

「どうして?それの方が美しいからだ。」

 先生の答えに私は感動した。

 日本ならば、「こうしなければいけない規則があるからだ」と言われるのがオチである。それなのに、美しいからだなんて!

 先生はゲイだったけれど、それだけに優しくて、フランス語を覚えたのも先生の辛抱強いレッスンのおかげであった。

 和声の試験については、また後ほど書きたいと思う。あんなに特殊な、面白い試験は他にはないと思うから。

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