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2017年4月28日 (金)

十四 ピアノ実技

 学科の話ばかりになっちゃったけど、メインはもちろん、ピアノ実技だ。

 先輩方から、「まあけっこう大変よ。」
 と聞いていたのだけれど、まあそれはけっこう大変なものであった。

 ベルギーでは何と言っても、四年に一度開かれるエリザベート王妃国際音楽コンクールがある。

 その会場は、我らがブリュッセル王立音楽院のコンサートホールである。

 なので当然、ここのコンセルヴァトワールを卒業した者は、エリザベートコンクールに出られるだけのプログラムは全て揃うように作られていた。

 一次予選、二次、ファイナルと進む中、用意する課題曲数は半端ない。欧州のコンクールの中でもかなりの曲を用意しなければならないものだったので、エリザベートを敬遠する人は多かった。だけどコンセルヴァトワールでは、毎年の試験課題曲にそれらが自然と盛り込まれるので、卒業時には、コンクールに出たければ出られるようになる仕組みなのである。なんて合理的。

 だけどそれに挑む者は少なかった。とてもレベルの高いコンクールだし、何人かの優秀な留学生たちは出場していたけれど、私たちはほとんど聴講にまわった。それについては、後ほど。

 とにかく、音楽院のカリキュラムは、四年のうちに卒業しなければならないプルミエプリ、そしてその次にまた四年かけて進むディプロムスーペリウールと分かれており、私はプルミエプリから入った。三月と六月に二回、実技試験はあり、三月は小さいサロンの部屋でテクニック試験(エチュードなど)、六月はホールで自由曲の試験となっていた。

 用意しなければならない曲は、三月用にバッハ平均律から三曲、スカルラッティやソレールなどのバロックを二、三曲くらい(忘れた)、ショパンのエチュードと、他の作曲家のエチュードから一曲。あともう一曲くらいあったかな。

 六月用に、古典、ロマン、近代、現代の指定された作曲家リストのうち、各時代一曲ずつ、計四曲を選んで練習しておき、本番そのうちの一曲は好きなものを選んで弾けるがあとの三曲からは試験官たちが当日一曲だけ選んで弾かされる。それから、ベルギー人作曲家が作った課題曲(アンポゼ)。これがまた、訳のわからない曲なのだが必須なのである。(エリザベートでも使われる。)

 六月の試験前には必ず門下ごとに一日かけてリハーサルがあり、三月の試験と六月の試験の点数を合わせたものが、プルミエプリ卒業の得点基準となった。

 これがディプロムスーペリウールに進むとコンチェルト(協奏曲)が入り、その他に大きな曲が五曲となる。

 はっきり言って、これだけの曲を揃えるのはかなり大変であった。演奏会一本、いやそれ以上できるくらいの曲数である。しかも全部練習してたって、当日当たらない曲もある。日本の音大もこのくらいやらせるべきだと思う反面、そりゃ無理だろうとも思う。でもこれは、そんじょそこらでは卒業資格を与えないぞという目的の、本場欧州ならではの考え方であるし、大変な勉強になった。

 何しろ一番の収穫は、嫌いだった古典派の音楽が大好きになれたことである。特にモーツァルト。ヨーロッパの空気を吸いながら、心から好きになって自然に歩み寄れたこと。現代曲に偏っていた私にとって、幅広く勉強させられたことは生涯の財産になったのである。なんてね。

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