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2017年4月25日 (火)

四 渡欧準備

 バイトを辞めた後は、それはもうピアノの練習がはかどった。と言っても、他にもやることは山積みで、相変わらずギリギリまでピアノも教えながらフランス語を習い、ベルギー大使館を往復し、面倒な手続きを進めていった。

(これがもう、サッパリ覚えてないんだが大変なこと、この上なかった。企業の赴任ならば全部会社がやってくれるんだろうけど、個人学生の留学なんて誰も、助言すらしてくれない。唯一、経験者である師匠のアドバイスだけが救いであった。)

 あとは学科試験の準備である。ベルギーのコンセルヴァトワール(王立音楽院)は、何しろ王立なので学費がほとんどタダに近いのが助かったが、(年間、円換算で一万五千円くらいだった)実技以外にも音楽史やソルフェージュ、和声学、あらゆる学科を、フランス語で受けなければならなかった。いやいや、そんなの、イヤというほど大学で習ったものばかり。しかもフランス語でなんか、カンベンしてほしいところである。ウワサによると、入試の時にソルフェージュなどの試験もあって、ある点数以上をとれば単位免除となるらしかったので、わずかな望みにかけ、もうどうにでもなれ、とサジを投げた。

 とにかく、八月までにはなんとか試験曲と手続き書類一式を揃え、フランス語はほとんどわからぬまま、現地の先輩たちに連絡を取りつつ、荷物は入試に合格したら送ってねと両親に言い残して、カバンひとつに片道切符で日本を発った。当時は今ほど国際便のチケットは安くなくて、ロシア経由のアエロフロート、片道でも十万もした。しかもロシアで一泊。その時はちょうどロシアが崩壊していた時で、空港には拳銃かまえた警備隊が居たりしておっかなかったのを覚えている。ああ、こうして書いていくと、忘れかけていた些細なことが思い出されてボケ防止にもいいもんである。

 お次は、独りでおっかないロシアのホテルに泊まり、そこでの出会いから始まるブリュッセル到着までについて書こうと思う。

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