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2017年5月11日 (木)

四十一 二年目の選曲

 十月のコルニル先生のレッスンが始まるまでに、私たちはアシスタントと相談しながら、二年目の試験に向けて選曲を始めた。

 各時代から好きな作曲家を、卒業時までにまんべんなく選んでゆくので、私はまず古典派からはモーツァルトを選ぶことにした。

 モーツァルト!幼い頃から、ベートーヴェンよりは、はるかに曲数をこなしてはいたが、きちんと弾くには難しい曲。そう思って敬遠していた。ところが、初めてブリュッセルに来た一年目の秋、大先輩アキカさんが、ベルギーのオケと一緒にモーツァルトのコンチェルトを演奏したのを聴いて以来、大好きになってしまった。惚れた、ってやつである。私もあんなふうに、楽しく幸せなモーツァルトを弾いてみたい。だから迷わず選曲した。ソナタK333、変ロ長調。頑張るぞ。

 ロマン派からは、ブラームスの間奏曲がまだ向いてるわよ、と言われてop.117を選んだ。ブラームスは、はっきり言って根暗だ。ドラマティックに盛り上がったかと思うと、報われない恋のようにしぼんで終わってしまう。暗い、暗いよ!と思いつつ、その恋い焦がれるような甘い旋律と、どっしりとした重厚な和音を出そうと、苦労した。だって、私には持ってないものばかり。相性が合わないのである。

 近代からは、プーランクの三つの小品を選んだ。これは何故選んだか覚えていないが、アキカさんの十八番だったので、彼女の影響は大きかったかもしれない。彼女は後々、コンセルヴァトワールのアシスタントになるので、何回かレッスンもしてもらった。とても良いレッスンを受けたのを覚えている。

 最後に、現代。これは私の得意とするところ。スクリャービンを選んだ。

 ド〜ンとソナタなど、と、いきたかったが、自爆しそうなのでやめておいた。五番のソナタは大学時代に弾いていたが、新しいものを弾きたかったので、二つのポエムop.32を選ぶ。スクリャービンは、初期の頃は多分にショパンの影響を受けて作曲しているが、後半はなんというか、エキセントリックで気狂いじみたところも多い。感情にまかせて荒れ狂うところも、事細かに表現を詩的に指示してくるところも好きである。型にはまらず自由奔放に弾けて、私の性格的には、やりやすい。迷わずこれをショワ(本番必ず弾く選択曲)にした。

 友人ユキは、ショワにグラナドスのゴイエスカスから一曲と、古典にベートーヴェンソナタop.10-3、リストのポロネーズ二番、プロコフィエフのソナタ三番を選んでいた。いずれも大曲である。

 それから忘れてはならない、三月のテクニック試験用にも、またバッハの平均律から三曲と、バロック二曲、エチュード三曲をやらねばならない。音楽やってる者にはわかると思うが、これは毎年かなりハードである。

 そんなこんなで、二年目は何が何でもプルミエプリを取る。と言う私たちの意気込みはハンパではなかった。十月までに少しでも譜読みを進めておかねばならない。そしてまた、たくさんの新しい留学生たちも日本からやって来て、交友関係も広がり、楽しく厳しい年の幕開けとなった。

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