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2017年5月29日 (月)

六十九 彼との再会

 仙台に着いたのは、朝八時半だった。深夜バスの道中、東北道はガラガラに空いていた。ユリの実家に到着すると、お母さんにとても親切にしてもらい、ヤマハC7のグランドピアノも弾かせてもらう。その日は彼女と仙台の街を楽しみ、次の日、すごーく迷ったけれど、レンタカーを借りて、いざ、二人で彼の居る地まで向かった。

 到着したのは夕方だった。彼の勤務先に行ってみたが、その日は休みであった。まるで探偵のように彼のアパートを探し当て、郵便受けを開けてみると、中からは彼のつけていた香水の匂いがした。キャーキャー騒ぐ二人。若い。しばらく待っていてもいっこうに帰って来る気配がないので、ユリと温泉に行くことにした。東北の露天風呂は最高である。それから定食屋で夕食をとり、夜の十時半、諦めかかった頃に、彼の車が入ってくるのが見えた。サッと隠れる我々。すぐさま、借りた携帯で彼に電話をかける。

「あ、カオルだーっ。」と言う、笑い声。ヨシヨシ、機嫌がいいぞ。
 声が遠いね?と言うので、もう、ベルギーに帰っちゃったよっ。と言うと、うそっ、いつ?と驚かれる。と同時に、玄関のチャイムを押す私たち。

「オイ〜、ふざけんなヨ、なんでそこに居るの?」

 と、ドアが開いた。

 彼は、口では冷たいことを言いつつ、とても優しかった。明け方まで三人で飲み明かし、その日は泊まった。すごく幸せな気分だった。会えてよかったね。なんて、ユリに言われて。次の日の朝は、私の好きなものばかり朝食を買ってきてくれて、よく知ってるなァ、なんて感激したものである。そして彼は、仕事へと出かけて行った。

 しかし円満解決したように見えたのは、そこまでであった。そこから私とユリは、彼おすすめの温泉に行き、オヤジたちの入っている混浴風呂に堂々と乗り込み、それからよせばいいのに、彼のアパートの合鍵を作り、置き手紙を残して仙台へ戻った。手紙は多分、もう一度私一人で来てもいいか、嫌だったら電話をしてくれ、という内容だったと思う。彼からのキャンセルの電話は、なかった。そして私は、これから家族でグアムへ行くと言うユリ一家に、お別れを告げた。

 そこで私はもう一度、彼のところへ戻るつもりが、ふと思い立ち、元カレの実家(仙台にあった)に電話を入れてみる。すると繋がり、大歓迎を受けた。今帰って来ているのか、仙台にいるのか、と訊かれ、急遽、遊びに寄ることになる。その元カレは東京にいるっていうのに、何故か家族と仲良しだった私は、ちゃっかり一泊させていただいたりするのだ。こういうところが、私の摩訶不思議なところであった。話を聞くと、我が夫も同じような能力を持っているようだったけれど。

 そして私は元カレのお父様に迎えに来ていただき、仙台めぐりは続くのである。

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