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2017年5月 6日 (土)

三十 学科試験

 六月の実技試験がやって来るまでに、色々なことがあった。

 まず、膀胱炎になった。何でなったかは、わからない。外にあるトイレに行くのが億劫で我慢したか、ストレスが溜まっていたか。それは謎であるが、とにかく、ある日血尿が出て慌てて私は病院へ行った。薬を飲めば治ったので大したことはなかったが、問題は、病院で使うフランス語であった。専門用語を使うわけだから、辞書を片手に、四苦八苦したのを覚えている。私はしょっちゅう病院通いしたので、その手のフランス語はかなり習得した。

 一度、レントゲンを撮らなければならない時に、若い兄ちゃん技師の前で、上半身ハダカにならねばならなかった。年を訊かれ、二十四、と答えると、「mange beaucoup!(たくさん食べろよ)」とニヤッとされた。余計なお世話である。

 婦人科へも行ったし、夜間救急にも行ったし、もともと身体の弱い私は、慣れない外国生活で輪をかけて身体をよく壊した。

 でも、身体の弱いわりに、気持ちだけはパワフルな私。だから、倒れる割にはアクティブに動いている。それは今でもそうなんだけど、とにかく、テクニック試験が終わってヴァカンスに入るまでの三月後半から六月後半までにかけては、ここ一番の正念場、という時期で、精神的にもキツかった。

 学科の試験は五月に行われた。和声や、アナリーゼ(楽曲分析)などである。いくつかの科目は申請が効いて免除になったが、この二つだけは判定試験に落ちたか何かで、残されたのである。アナリーゼの試験なんて、もう全くテキトーだったからほとんど記憶にないのだが、楽曲はソナタが出題された。何のソナタだったかは覚えていない。

 試験中、外国人の私たちは辞書持ち込み可だったような気がするが、それにしても長文回答を求められる問題などサッパリ書けなかった。危うく試合放棄するところだったんだけど、見回って来た先生に、「とにかく何でもいいから書け」と言われて、 私は慌てて楽曲の中に、「主題」だの「展開部」だのと書き込んでゆき、問題文の方には「楽譜を参照のこと」とだけ書いておいた。それを見た先生は、「ça va,ça va(ok,ok)!」と笑顔で脇を通り過ぎって行った。

 結果は、見事合格。コイツらには仕方ないから慈悲で点をあげようと思われたのか、六十三点もとれていた。いまだに不思議でならない。

 一方、同じ六十三点で、和声学の方は落とされた。

 和声には、アンフェリウール(初級)、モワイアン(中級)、スーペリウール(上級)があり、一年目はもちろん初級。と言っても、朝八時半から始まり、弁当持参で昼過ぎまでかけて、バス課題、ソプラノ課題とそれぞれ別々の日に分けて行われる。初級のテストはまあ昼頃には終わるが、中級となると私は夕方くらいまでかかった。

 和声が落ちたのは、そうかやっぱりな、という感じで、まあもう一年頑張ろう、と思った。楽しくなってきたのである。一つの曲を作り上げる、もういわゆる作曲の領域であったし、初級だけにとどまらず、その上にもチャレンジしてみたかった。先生も大好きだったし、もちろん宿題は時間をとられて大変ではあったが、勉強の楽しみを知った喜びは大きい。

 そして、じわじわと六月の実技本番は近づき、私の「もう一年延長説」も具体化されて行くのである。

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