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2017年5月26日 (金)

六十四 幼馴染みとの再会

 幼馴染みの彼女たちとは、感動の再会!を期待していたのに、あっけなく裏切られ、ちゃっかり奴らは先に着いてハンバーガーを食べていた。「遅いよ〜カオルちゃ〜ん。」なんて言って。さすがは、小さい頃から知る仲である。

 空港からタクシーで、私の住む半地下室へと案内する。途中、彼女たちは近所をウィンドーショッピングし始め、私がふと、目に止まった黒のセーター(セールで八百円だった!)を買うかどうか悩んで、やっぱりこれで一日の食費になるからと、結局やめにした姿を見て、そんなに貧乏なのかー、可哀想に!と笑って、気前よく買ってもらった。友情に感謝である。

 夜はスペイン料理屋に案内し、東北の彼氏のことを散々、冷た〜い!と言われ、否定できない私がいて悲しかった。

 次の日には市内観光に出るが、彼女らは、やれ今日中にワーテルローにも行きたいだの、好き放題に文句を言って、散々ケンカになる。一人はフィレンツェに留学をしているヨシエで、もうヨーロッパのペースには慣れていたと思うが、日本からやって来たミーちゃんはこっちの生活なんて始めてである。列車も全て、時刻通りに動くと信じているし、自分の計画通りに事が運ぶと思って疑わない。加えて、昔っからこやつは、非常にワガママである。面白いったらありゃしないが、連れ歩くのは大変であった。

 結局その日の日中は、グランプラス、コンセルヴァトワール、教会、美術館などをめぐって終わった。夜はフレンチへ。そして、それだけでは満足できない彼女たちは、アントワープまでフランダースの犬の銅像を見に行くと言い出した。優しいよっちゃんは承知してくれて、車でひとっ走り、パトラッシュを見に行く旅へと出かけるのである。フランダースの犬なんて暗い話、知ってるのは日本人くらいだから、真っ暗の中、大いに道に迷い、アントワープの街に居たポリスにたまたま誘導してもらって、無事辿り着けた。ポリスたちもすっかり楽しんじゃって、今思い出しても笑える想い出である。

 その次の日は、彼女らだけでブルージュに行ってもらった。ブルージュに行ってから、違う街にも寄りたいと言ってごねていたが、私は絶対にムリだと太鼓版を押しておいた。できると思うなら、やってみな。こっちじゃ、列車だって時間通りなんかにはいかないよ。と笑って、送り出す。案の定、七時にくたくたになって帰ってきたが、どこの街にも寄れなかった、ブルージュだけを楽しんで来たよ、カオルちゃんの言う通り!と言って笑っていた。私はラタトゥイユとチキン、それにピラフ、モツァレラトマトサラダを作って迎えた。彼女たちは感動して、「カオルちゃんが、料理作れるようになって、しかも美味しい!お母さんに報告だ!」と大騒ぎしていた。

 そんな中、驚いたことに、東北の彼から留守電が入っていたりした。

「たまには電話しろよな、社会人!」

 と留守電で挑発しておいたら、

「電話したっていないじゃないかよ、このヤロー!」

 と、入っていて、たまげた。優しい声。久々に聞く彼の声に、私は嬉しくなった。

 そんなこんなで、私たちの珍道中は一週間ほど続いた。ドイツのローテンブルグに行ってクリスマス市を見ても、相変わらず何も買わない私の我慢強さに驚かれるが、そこで私は生涯の大事なものとなる、可愛いクマのぬいぐるみに出会う。ある店のショーウインドーに、ちょこんと置かれていたクマさん。二千円くらいだったので、買わずに店を出たものの、どうしても気になり、意を決して戻って購入した。彼女たちにも、よかったねぇ〜、と言われ、それが今では、娘なっちんの肌身離さずお気に入りのクマさんとなるわけである。

 彼女たちとの楽しい一週間は過ぎ、私は疲労のためバタンキューであったが、東北の彼の予言通り、少しずつ気持ちは晴れていった。

 そして私の気持ちは以前より前向きになり、来年残るならば、コンチェルトはやっぱりモーツァルトにしよう。と楽譜を選び始めるのであった。

 これが、日本に帰国してから後、夫と共にコンチェルトの演奏会を開く際のレパートリーとなるのである。

 その時は苦しくても、後からやってくる幸せとは大きい。その分ね。

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