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2017年5月15日 (月)

四十七 誕生日プレゼント

 北京の、もとい、東北の彼氏から十日遅れで届いたプレゼントは、タンザナイトのブレスレットであった。

 去年の誕生日には、デッカい段ボール箱にギュウギュウに詰められた、たくさんの可愛い中国の動物たちのぬいぐるみが贈られてきた。いたずらっぽい顔をしながら詰めている姿が想像できて、大笑いしたものである。

「去年よりは全然、イケてないけど。」と言いながらも、プレゼントを選んでくれた彼。そんな彼に私は、お礼を言った。まあ、パッケージに三万円なんて正直に書くから、しっかり関税取られちゃったんだけど。社会人になったって言う証だね?

 一月の誕生日の日は、私は何人かの先生たちと合同で、生徒たちの発表会を行っていた。向こうでは、教会や楽器店などを貸切り、私たちも弾いてあげたりしながら、アットホームな発表会を行っていた。向こうの赴任の家族の家は広かったので、生徒さんのお宅で、自分の門下生たちだけでホームコンサートをしたこともある。自分の勉強に忙しかったが、生徒たちもまた、徐々に増えてきていた。留学生たちは皆、生徒を教えながら、小遣いや生活費を稼いでいたので、ベルギーを引き上げる時は生徒たちを何人かの留学生たちに引き継いでもらった。

 ピアノ実技の方は、まさに今、佳境を迎えるといったところであった。

 二年目の運命が決まる最初のテクニック試験は、三月下旬。あと二ヶ月だ。膨大な曲数を抱えて、暗譜が間に合うか、間に合わないか?というギリギリのところである。

 コルニル先生に代わり、去年よりもずっとレッスンの質も量も上がっていたが、それだけに苦しいところもあった。まず、エチュード類は、こてんぱにやっつけられた。左手の暗譜がうまくいかない。悔しい。パリのアンリオ先生のところへレッスンにも行き、他の留学生たちが私よりももっと仕上がっているのを聴いて、がっくりして帰ってきたりした。

 そう、上には上がいる、とはまさにこのことである。日本の大学にいた頃は、はっきり言って自分は上位の方に居たので、譜読みなんかも圧倒的にまわりの学生たちよりは早かった。それがどうだろう、世界は広い。まあ、音楽家連中というものは、ひょんなところで知り合いの知り合いだったりしたので、狭い世界なのかもしれないが、ライバルたちは皆、本当に優秀だった。一生懸命やっているのに、なかなか追いつかないという感じ。苦しかった。こんなに勉強したのは、一生のうちでこの時だけだったと思う。私はどちらかというと、小さい頃から勉強はよく出来る方で、そこまで苦労しなくても何事もうまく進められたのだが、挫折、苦労、という二文字をこの時ほど味わったことはない。まあ、適当に遊んで息抜きもよくしてたんだけどね。遊ばなきゃやってられなかった。本当に。

 ということで、まさに今が肝心の踏ん張り時、という最中に、東北の彼氏は大型連休だとぬかしてやって来るわけである。自分が忙しい時は絶対に会おうとしないくせに。

 恋とは、惚れたもんが負けである。私は自分の負けを承知で、忙しい真っ只中に、彼をまたもや迎え撃つわけであった。現地の彼とも別れ、勉強もひとまず棚に上げ、息抜きしよう、と決心をして。

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