« 三十六 帰国した彼 | トップページ | 三十八 日本の友人たち »

2017年5月 9日 (火)

三十七 もう一年の延長

 私は何も一時帰国で浮かれ飛んでばかりいたわけではない。(そうだったけど)

 入院していたおばあちゃんを見舞い、手術の付き添いをしながら、半分呆けてしまった祖母になるべく思い出してもらおうと思いながら、病院へ通ったりしていた。祖母は幼い頃から一緒に暮らしていた、私の第二の母である。

「おばあちゃん、カオルだよ。」

 そう言うと、じっと私の顔を見つめ、

「気になっててねぇ。」

 とだけ、ポツリと言った。おお、覚えているのかな!と嬉しく思う。

 母は私のようないい加減な人間ではないから、娘の私たちが心配になるほど、介護に一生懸命であった。私が同じ立場になったら、気持ちはあるけど多分その適当さっぷりを、今から謝罪申し上げる。

 そしてまた、ブリュッセルのよっちゃんもたびたび電話をくれた。

 彼には私の不在の間、部屋を任せていたのだが、何と、猫を飼ったと言う。ネズミ対策にほとほと困り果てていたし、そんなところへ、知り合いの本屋さんのところに可愛い子猫たちがたくさん生まれたらしい。名前はプーすけ。ボクがちゃんと育てておくから、まかせとけ!と張り切っている。彼は本当に優しい人だったので、動物の世話なんかになるともう、愛情深くて深くて、私にはとうていそこまでできないくらいに可愛がってくれた。

 私が日本で彼と会っていることは知らせていたけれど、子猫の世話ももう全てを任せた。なんだかんだ言ってもどうせ私は、日本でリフレッシュした後は、またあの暗い穴ぐらの部屋へと戻って、黙々と勉強を続けて行くことになるのだ。

 日本で一息つきながら、色々と師匠たちに話を聞いてもらい、友人たちとお喋りをするうちに、またもう一度ベルギーで頑張ろう、と私は、日、一日と決心を固めていた。そして父も、卒業資格を取ってこいと、一年間の送金を約束してくれたのである。

« 三十六 帰国した彼 | トップページ | 三十八 日本の友人たち »

ピアニストMama♪ 留学白書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/605244/65254275

この記事へのトラックバック一覧です: 三十七 もう一年の延長:

« 三十六 帰国した彼 | トップページ | 三十八 日本の友人たち »

フォト
無料ブログはココログ