« 五十七 二年目の和声試験 | トップページ | 五十九 中級、不合格 »

2017年5月23日 (火)

五十八 初級合格

 和声の合格発表だと思っていた日、朝からコンセルヴァトワールへ行ったのに、そこには何も張り出されてはいなかった。午後にももう一度行ったのに、やっぱり何もない。な〜んだ。私はがっかりして、仕方なく街をブラブラ、ウィンドーショッピングしていた。

 こういうことが、ヨーロッパではよくあった。予定変更。日常茶飯事である。幸い、交通機関の遅れはさほどないベルギーであったので、イタリアなどよりは全然まともではあったが。

 ウィンドーショッピングは本当に楽しくて、街をただ、歩いているだけでも全てを忘れて、ウキウキした気分になれた。日本と違って、個別になってるお店が多いから楽しい。そのディスプレイを見ているだけでも気分が上がる。装飾など、とってもセンスがいいし、クリスマスにはツリーの飾り付けを見ただけでも、うーん、日本とは違うなあ。なんて、感心したりしていた。

 そして次の日。アシスタントのレッスンへ行ったのだが、そこでようやく、和声の試験が発表になっていた。初級、アンフェリウールに、私は七十六、五点で合格した。嬉しい!七十点以上が合格となるのだが、去年よりも十点以上アップでの合格だった。頑張って勉強して良かった。これに落ちたら、もう望みすらなくなったような気がした。まあ、まだ中級の最終試験はこれからで、そこまで合格しなければプリは取れないのだが、とりあえずは階段を一段ずつ上るしかない。私は嬉しくて、皆に報告しまくった。

 東北の彼氏からも、おめでとうと、折り返し電話がかかってきた。この間の電話では、ちょうど彼が疲れているところへかけて非常に険悪ムードで終わっていたので、怒っているのかと訊いたら案の定、気にしていないと言う。どうせ、和声の試験前でイラついてるんだろ、言わせとけ、くらいに思ってたらしい。だから私も、どうせ気にしてないと思ってた、いつものことだから、もっと言ってやれ、くらいに思っていたよと言うと、爆笑していた。そして、なんだ、和声も初級どまりか〜、なんてまた、意地悪を言われた。電話の向こうでは、蛙が涼しげに鳴いていた。ああ、日本なんだなぁ…と私は、ぼんやりと思っていた。

 そう、試験前のこの時期は本当に、私たちはイライラしていた。そんな中、気晴らしをするかのように、ウィンドーショッピングしてはお金のなさにますますイライラしてきたりしたのだが、この時私は思い切って、まさに二年ぶりくらいにワンピースとサンダルに、香水を買う。スカッとして、また練習の穴ぐらへと戻った。彼に電話をかけても機嫌の悪いことが多いし、これはいい効果を生んだ。

 そして六月に入り、いよいよ実技本番に向けてのリハーサルが行われた。
これはコンセルヴァトワールの舞台で、夜九時から十二時までかけてやる。私はただ一人、アンポゼ(ベルギー人作曲家の、ヘンてこな課題曲)の暗譜に乗り出し、まわりの学生たちに驚かれていた。暗譜はしなくてもいいルールであった気がするが、現代曲の得意な私には楽勝であった。夜のリハは非常に疲れたが、まだ詰めが甘い部分の見直しになるので、気が引き締まる思いで臨む。

 和声の最終試験は、その二日後であった。モワイアン、中級のソプラノ課題である。この日はもう、朝の八時から夕方五時までかかり、能力の限界だった、と記されてある。それでもやるだけのことはやったし、後はもう、天に祈るしかなかった。

 そして疲れ切った次の日私は、パリへレッスンに行く。今から考えると本当に、若さなしでは乗り切れないハードなスケジュールをこなしていたのだなあと思う。

« 五十七 二年目の和声試験 | トップページ | 五十九 中級、不合格 »

ピアニストMama♪ 留学白書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/605244/65313121

この記事へのトラックバック一覧です: 五十八 初級合格:

« 五十七 二年目の和声試験 | トップページ | 五十九 中級、不合格 »

フォト
無料ブログはココログ