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2017年5月11日 (木)

四十 【二年目】 再びブリュッセルへ

 パリ、シャルルドゴール空港へ降り立つと、そこは懐かしいヨーロッパの匂いがした。冷たく乾いた空気、香水の香り。あちこちで聞こえてくる、フランス語。ああ、また頑張るぞ!と気合いが入る。

 エールフランスを乗り換えて、ベルギーのザベンテム空港まで向かって行く。機内から見える、どんよりとした雲が、ああ、戻って来たんだなぁと思う。

 到着すると、そこにはよっちゃんがお出迎えしてくれていた。

「カオル大先生!元気でしたか〜。」

 と、ひょうきんな彼は、冗談めかしながら言って、荷物を持ってくれた。

 調子のいい奴!って思うでしょう? そうです、私は調子のいいオンナである。何とでも言ってくれたまえ。彼氏を二人抱えて、私はひどい女であった。後に、三人になったりもする。土下座して謝ります。

 でも彼らは二人とも、私のことなんて全然信用してなかったし、だいいち結婚も決まってない若者が誰かに束縛されることはない。と、思っていた(と思う)。彼らとは今でも仲の良い友人なので、私の懺悔に笑ってくれているはずである。人間の心は複雑で、なかなか割り切れないものだ。と、屁理屈こねるとこも調子のいい奴の典型だとは思うが、とにかく、ブリュッセルに降り立ったこの瞬間、やっぱりよっちゃんとは良き友人に戻ろう、その方がお互いのためにいい、と思ったことは確かだった。

 時刻は夜で、街中のライトアップがとても美しかった。あっという間に、ヨーロッパに馴染む私がいる。家に着くと大家さんたちともすぐ会えて、早速ショファージュ(暖房)をつけてもらい、疲れ切っていた私はすぐに眠った。この部屋にももう一年住めることになり、家賃が少し値上がりしたものの、救われた思いであった。

 そしてまた、十月から始まるコンセルヴァトワールの授業に向けて、セクレタリー(事務局)での登録や、膨大な曲決めと練習が始まったのである。

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