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2017年6月24日 (土)

百三 四年目の選曲

 四年目の試験課題曲に、私はまず、プーランクのコンチェルトを選んだ。

 これは確か、アシスタントに勧められた記憶がある。貴女によく、似合ってるわ。それにこれ、エリザベートコンクールのテーマソングなのよね。オープニングで流れる曲よ。と言われる。実際、これはモーツァルトのコンチェルトよりも簡単であった。(近現代得意な私にとっては。)だけど綺麗な曲なのだが、どうもやってみるとピアノがメインというよりはオケがメインで、ピアニストとしては少々、物足りなく感じる。けれど四年目の選曲としては、コンチェルトよりももっと他に、私の目標としたいものがあったのでヨシとすることにした。

 私は少しずつ、日本でのリサイタルプログラムを意識するようになっていた。だからこの年、私は自分の得意路線で、大きなソナタに取り掛かることに決めている。

 バーバーのソナタ、全楽章。最終楽章のフーガだけは、一年目にチャレンジしていたが、全楽章は初めてである。前章で、メルクス先生が十八番だと言っていた、その曲。これは日本の大学で、先輩であるヨシミちゃんが弾き、その時から大好きな曲となったもので、いつか自分も弾いてみたいと思っていた。私は当時痩せていて、なかなか迫力ある音が出せなかったのが難点であったが、今ならばこの曲を仕上げることができるような気がしていた。今振り返ると、よくぞこの膨大な課題の中で、このソナタを仕上げることができたなあと思う。よっぽど最後の年は、私にはやれるという自信があったのかもしれない。そして後ほどこれを、帰国リサイタルのトリに持ってきている。通すと二十分前後ある、けっこう難解な曲である。

 その他には、バッハのパルティータ一番、ベートーヴェンの悲愴ソナタ、スクリャービンのエチュードop.65-3、ドビュッシーのエチュード、アルペッジョコンポゼを選んだ。

 私が最初に譜読みに取り掛かったのはベートーヴェンである。一番ラクだったし(と言っても全楽章であるが)、とにかくどれかを早めに仕上げてレッスンに持って行かねばならなかったからだ。その次に練習にかかったのは、バーバーのソナタ。大きい曲なので、少しずつ仕上げていかなくてはならない。順序よく計画を立ててやらないと、とてもじゃないけど間に合わなかった。でもこの年はずいぶんと譜読みも早くなり、自分でも驚いている。

 この秋にはまだ、私には、果たして夏の試験が終わるまでベルギーに残っていられるかどうかわからなかったが、演奏会のひとつでもして、納得できるくらいになるまでは居たい。と書いている。父からの帰れコールの圧力がかなりかかっていたが、私にはまだやりたいことが残っていた。

 ディプロムスーペリウールを卒業するまでには最短で四年、つまりあと二年は残らねばならなかったが、私にとってはこれは重要ではなかった。それよりも、演奏会一本できるくらいのレパートリーを作りたい。という思いが強かったと思う。お金ももう残り少なく、両親からの送金はもちろんない。ギリギリのところで、ただひたすら応援してくれているよっちゃんと共に、できるところまで残ろう、と決めていた。

 そしてその充実した秋は過ぎて行くのである。たくさんの、仲間たちと共に。

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