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2017年6月 1日 (木)

七十二 三年目のブリュッセルに向けて

 東北の旅から帰ってきた私は、残りあと十日ほどの夏休みを満喫した。

 最後に師匠、Mr.カワソメに会い、
「お前、来年帰ってきたら(実際には、再来年となるのだが)『こうしなきゃならん』なんて考えるなよ。好きなようにやれ。」
 とおっしゃっていただく。

 それから、大好きなアキカさんにも会った。彼女は案の定、遅刻していらっしゃったが(ヨーロッパの感覚、そのままである。)帰国当時のままのアキカさんの様子に、私は嬉しくなった。そして東北の彼氏との別れを報告し、やっぱり、遠距離は難しいよねェ〜。なんて笑い飛ばしてもらえる。ついでに彼女の恋愛相談も聞かされちゃったりして、とっても楽しかった。

 幼馴染みのミーちゃんの結婚式もあった。彼女の花嫁姿はとても素敵だった。もともと美人な彼女は、若さも手伝って、とても華やいでいた。私はもう一人のヨシエとそろって祝福し、お次に行くのは誰だ、先に行かれたら、マジで涙だよ〜!などと言って、笑った。

 もうじきヨーロッパに戻る私は、男女共たくさんの友人たちに別れの挨拶をした。一人、ちょっといい感じになりそうな彼もいたりして、そのシチュエーションを大いに楽しんでいた。どうせ私はまた、ブリュッセルに帰る身。あっちだって、そのつもりでいたに違いない。だけど私の心の奥底には、東北の彼氏と別れた傷がしっかりとついており、ちくしょー、覚えてろよ!くらいな気持ちで、多少やけになっていたと思う。

 最後の日は、愛犬ビビとお別れをして(彼女は神妙な顔をしていた。)母に豪華な食事を作ってもらい、成田の夜の便に向けて出発した。

 成田空港で、私は最後に、東北の彼に電話をかけた。

「もしもし」と出た瞬間、時間が止まったような気がした。

「もう、かけないでおこうと思ったんだけどね。今から出発なんだ。」

 と私が言うと、

「そうか、頑張って来いよ。」

 と一言、想いを込めた様子で彼は言った。

 電話を切ってから、私はこの時初めて、涙が溢れた。彼はいつもいつも夢の中の人だった。大好きな人だった。叶うものなら、一緒になりたかった。本当に、いつになったら私は幸せになれるんだろう。あと一年か。しんどい。でも、頑張るしかない。当時高校生の妹、ユリコにも電話を入れた。お姉ちゃん、寂しいよ〜。タクさん(彼女の友人)も、寂しがってたよ。と言ってくれる。私は妹の友人たちともまた、仲良しであった。

 パリに向かうエールフランスの夜の便は空いていた。そしてブリュッセルには、九月十日、現地時間の八時半に到着する。

 そこにはまた、神妙な顔をしたよっちゃんが出迎えてくれていた。

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