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2017年6月17日 (土)

九十六 夏休みの訪れ

 夏休みの訪れと共に、私は猛烈に腹を下した。

 食あたりである。おそらく、ユキたちと二日前に食べたレバ刺しにあたったと思われる。身体中痛むし、熱で怠いし、辛すぎて、よっちゃんに病院まで連れて行ってもらった。その日は一日苦しんだが、次の日には何とか復活をした。ユキに訊いてみたが、彼女は何ともないと言う。きっと、一緒に飲んだ酒の量がハンパなかったので、消毒しちゃったんだろうと笑っていた。う〜ん、私ももっと飲めば良かった。ちょっと後悔。(ホントか?)

 まだ体力はなかったが、ヨロヨロと起き上がってコルニル先生に電話を入れる。この夏は日本に帰らず、イタリアのコンクールを受ける予定だった。今までのレパートリーを使って、選曲のアドバイスをしてもらう。

 先生は張り切ってプログラムを決めてくれた。一次でラフマニノフとバルトークをやれと言う。私はちょっと迷い、アキカさんにも電話をしてみた。彼女は、カオルちゃん、もっと綺麗な曲を入れた方がいいんじゃないか、と言う。私もそう思った。どうしようかなあ、なんて思っていたらふと、東北の彼にまだ試験結果を報告していなかったことを思い出し、彼にも電話を入れてみる。すると。

 彼は、珍しく話しにくそうにしている。つい先日の電話では、あんなに楽しそうにヨーロッパ行きたいな、なんて言っていたのに。どうしたの?と訊くと、う〜ん、もう電話、しない方がいいかもしれない。と言う。どうやら、彼女(彼氏?)か誰かが居たらしい。なーんだ。私はガッカリして、電話を切った。どうして男と女の間には、友情が成り立つのが難しいんだろう。せっかく親しくなった人たちと離れなければならないなんて、寂しいな。と、日記には書いてある。まあ、でも仕方ないか。そして私は、サッサと気持ちを切り替えて、四年目のコンセルヴァトワールの試験選曲についても、アシスタントと相談を始めるのであった。

 そう、私は、四年目も引き続きブリュッセルに残る気満々であった。でもそれはまだ確かな予定ではなかったかもしれない。父は反対していたであろうし、相棒よっちゃんは、残りたい気持ちはあったが、そろそろ仕事に見切りをつけたいと思う気持ちもまた、あったと思う。私自身もまた、日本に帰りたいという気持ちもあり、でも勉強のことを考えると、もう一曲新しいコンチェルトをやってみたいと思ったり。皆の気持ちは、それぞれに揺れていた。そして私は、とりあえず、目先のコンクールのことだけを考えるようにしていた。

 そんな訳で、この夏は初めてブリュッセルに残って、ピアノの練習に費やそうと思っていたのである。あの電話が入るまでは。

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