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2017年7月 8日 (土)

百十七 母からの手紙

 本番前のリハーサルが続き、追い詰められモード全開だった時に、母からの一通のファックスが届いた。

 カオルちゃんの、寂しい気持ち、察します。

 ベルギーでの生活に馴れ、たくさんの培った想い出や、又、これで勉強を終えてよいものかどうかと迷いが一気に押し寄せ、悲しくなるのは当然だと思います。

 人生には、どちらにするか選択をしなくてはいけない時が幾度もあり、どちらを選んでもそれなりの苦労も楽しみもありで、先が見えないだけに難しい問題です。

 きっと、コンクールの終了後、カオルなりの心の決着が出来るのではと思いますが、どちらを選んでもカオルは体当たりして、一時的に沈んでも立ち直りが早いからエライ!とお父さんが褒めていました。

 と、ここで日記の文章は終わっているが、私は母からの励ましの手紙に胸が熱くなった。

 やはりこれでもうベルギーを終えよう。先生たちにも、一緒にここまで勉強できて幸せだった、またベルギーに来た時、よろしくお願いしますと伝えよう。と思う私。

 そして気持ちを切り替えて、試験まであと一週間、全力を尽くすことを誓う。

 和声のメルクス先生にも、この秋に帰国するかもしれないと告げる。

 先生はとても悲しいと言ってくれて、この夏はブラジルに行くんだと教えてくれた。

 結局、上級の試験は私は受けなかったような気がする。全然覚えていないんだけど、日記には書いていないので、多分、授業だけを受けていて、まだ自信がなかったのでその年はトライしなかったようだ。先生とはその日が別れの日になるのかもしれないと、胸が一杯になってしまったが、もう一度、帰国する直前にお会いすることができて、今はどうなさっているのかがわからない。お元気でいらっしゃることを祈る。

 試験直前のリハーサルでは、ユキがショスタコーヴィチのコンチェルトの合わせに四苦八苦していた。アシスタントではなく、コルニル先生が直接、オケパートを引き受けていらっしゃったが、とても難しいので、二人してなかなか息が合わず、イライラしながらやっていたのを覚えている。

 私は何とか今年は曲も出来上がっていたのだが、ピアノが思うように鳴らずに困っていた。ちょっとパンチが足りない。つくづく、本番って大変だと痛感である。でも、本番まで腕を痛めないように、カルムに(静かに)練習しておくように、と忠告を受けて帰ってきた。

 最後の試験前。頭の中は、もうピアノ一色である。

 思うに、この四年間で、試験前のさらい方は一番の出来であった。

 そのため幾分、精神的余裕はあったが、前日などもうやっぱり、心ここに在らずとなる。ユキやキボウちゃんからも電話が入り、皆同じ心境だと知る。一日早く試験が終わったトッコちゃんの話によると、何やら今年はえらく長いこと弾かされたらしい。

 明日はどの曲が当たるだろう。コンチェルトは弾かされるとしても、バーバーが当たったらどうしよう。恐ろしい。

 私はかろうじて気分転換に生徒にピアノを教えに行き、「今年の夏はギリシャへクルージングしたい!」といきなり言い出すよっちゃんを尻目に、一人、明日の試験へのプレッシャーに耐えていた。

 そして、私の、ベルギー留学生活最後の試験はやって来るのである。

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