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2017年7月16日 (日)

百二十五 サントリーニへ

 九月二十八日、四時半起床。いざ、ギリシャ、サントリーニ島へ!

 飛行機は少々の遅れがあったものの、無事に飛んだ。

 ミコノス島に寄ってからのサントリーニ到着であったが、島の滑走路というのは恐ろしく短くて、ギュイーン!と無理やりブレーキをかけて止まる感じであったから、ものすごくビックリした。機長の腕はすごい。

 サントリーニは素晴らしくいいところだった。日差しは強いが、二十五度〜三十度くらい。カラッとしていて、心地よい。何しろ私たちの宿泊先は、プール付きの、海の見えるホテルだ。素敵すぎて大喜びをし、早速プールでひと泳ぎして、昼寝をする。こんなのって、映画みたいだ。いいなあ、ヨーロッパ。

 私とよっちゃんは、何度も言うけど旅のペースがぴったりだったので、楽ちんそのものであった。彼は私よりも食事の時間が長く、ありえないほどゆっくり時間をかけて食べる。それから、虚弱ッキーな私を常に気遣ってくれて、ちょっとでも私が自分のキャパを超えて動こうとすると逆にセーブされるので、体調を崩すことはなかった。今日はあっちまで行っちゃおうよ!と提案しても、それは、悪いこと言わないからやめとけ。みたいに、私の身体のことはよくわかってくれていた。そして、彼の言う通りに動くと、あ〜ほんとだ、やめておいて正解だったわ。ということがよくあった。

 ギリシャの島の、さんさんと降り注ぐ太陽の下にいると、不思議なことに、不安なことも、嫌なことも、なあんにも頭には浮かばなくなった。旅って本当にいい現実逃避、ストレス解消である。

 ギリシャは食べ物がまずい、と聞いていたのだが、心配するほどではなく、ホテルの夕飯も、出先で食べるものも全部、とっても美味しかった。これは多分、私たちが日本から来たのではなく、ベルギーから来たということがあると思う。ちょっとクセのあるものが多かったし、日本人の口には合わない料理もあったかもしれない。でも私たちにとっては、鶏肉のグリルや、豚肉、それにど〜んと乗ったじゃがいも、タラマやイカの詰め物、ズッキーニのぶつ切り、ムサカ、サジキ、ギリシャ風サラダなどなど、美味しいものばかりで、たらふく食べて大満足であった。

 私たちはチャカチャカと移動をする旅が好きではないので、一週間くらいをずっと、サントリーニでのんびりと過ごした。もちろん、その間いろいろなところへ行き、フィラの町で遺跡を見たり、ちょっと遠出をしてビーチに出たり、イアの町でアーティストたちの作品を見たりした。

 思い出深いのは、いきなりの思いつきで、バルカーノ火山口へ出かけた時のことである。私たちはよく、フラッと思いついて行動に出ることがあったが、この選択は大正解となり、彼は忘れちゃったかもしれないけれど、私は今でもとてもよく覚えている。

 暑さにヘトヘトになりながら歩いたが、二時の船でバルカーノへ出発し、海風を受けながら、真っ青なエーゲ海の魚たちを見下ろしていた。

 三十分くらいで到着したバルカーノは、いかにも溶岩が流れ出た感じの、ごつい岩ばかりの島。そこまで船は着けられないから、泳げる者は泳いで行け〜、と言われ、若者は皆、船からボンボンと飛び込み、硫黄の温泉が湧き出ている場所まで二百メートルくらいを泳いで渡った。当然、よっちゃんもさっそうと泳いで行った。残るのは、私のように泳ぎの自信のない者と、水着を忘れちゃった者と、お年寄りである。羨ましい。カオルちゃんは、無理だよ〜〜!と海から叫びながら泳いで行った彼が忘れられない。

 しかしさすがにヨーロッパである。日本だったらこんな自由なことは、やらせるはずがない。しかも見張り一人いなくて、船員たちはその間、笑いながら知らんぷりであった。誰か沈んじゃったらどうするんだろう。

 それは、火山口でも同じことが言えた。ロープだって張っていないし、道だってほとんど整備されておらず、そのままだ。暑さと険しさの中、頂上までヒーヒー言いながらたどり着いたが、大きな火口からは硫黄の煙がもくもくと出ていて、足元の砂は熱かった。けっこう疲れたが、サントリーニを一望する景色は素晴らしかった。風が心地よい。私にも泳げる場所があって、初めてエーゲ海に入ったが、エメラルドグリーンの水は少し重たかったのを覚えている。

 フィラの町へ戻ると、今度は階段をロバで上がった。おじさんが後ろから、ギャロップギャロップ!と叫ぶと、ロバは飛び跳ねて走ろうとする。私が振り落とされそうになるのを、おじさんはゲラゲラと笑いながら見ていた。

 本当に楽しい、ヨーロッパ生活最後の旅行であった。疲れたらのんびりと、ホテルのプールで泳ぎながら、持ってきた本を読んだり、昼寝をしたり。

 ロマンチックな夜のプールサイドのバーで、夜風を浴びながら飲むウゾー。ほのかにライトアップされた、レストラン。ウエイターたちには、「バカンスか?それともハネムーンか?」と訊かれ、カップルで来ているのにもかかわらず、私が一人になると、常にウインクをしてみせた。

 最後の日、サントリーニの空港にはベルギー人ツアー客たちがひしめいていて、これがあの、陰気なベルギー人たちか?というくらい、陽気な雰囲気であったが、青天のギリシャから、雲の中を抜け、どんよりとしたベルギーに戻って来たとたん、皆、元の暗い顔に戻っていたから、不思議である。

 到着したら、ベルギーは十一度。ど〜んより。飼っているウサギに赤ちゃんが生まれた!と言って、はしゃぐエヴァに迎えられた。

 そして、私は日記に書いている。
「もういいや!ベルギー!」
と。

 青天のギリシャへ旅して、私たちは四年間のベルギーでの想い出を、すっかりその地に置いて来られたのかもしれない。

 時は、一九九九年、十月五日。帰国する日まで、あと十二日となる。

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