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2017年7月15日 (土)

百二十四 アンリオ先生の贈る言葉

 九月下旬になって、私はアンリオ先生にご挨拶するために、パリに向かった。

 友人エミコは快く泊めてくれて、私たちは二ヶ月ぶりの再会を祝った。行くたびに閉まっていて、なかなか見られなかったオペラ座、ガルニエもこの日は開いていて、憧れのシャガールの天井を見ることができて、感激であった。

 アンリオ先生の御宅には、翌日の朝に出て、郊外のサンラザールにはお昼前に着いた。先生とは、一時間くらいお話ができた。色々なことを話せて、本当に嬉しかった。一番嬉しかったのは、先生からの「贈る言葉」として、

「日本に帰ったら、カオルのことを良く知っているアキカや、コースケ(奈良先生のこと)に習え。他の先生には変えるでないぞ。」

 と言ってもらったことである。

 実は、あのコンクール以来、会場で審査員の言った言葉が離れず、私は少々悩んでいたのだ。私のところへいらっしゃい。きっと、もっと良くなるはずよ。そう言っていた、あの冷たく傲慢そうな先生の一言。私は、このままではダメなのかと思っていた。でも、アンリオ先生はそんな私の気持ちを見透かして、はっきり助言をしてくれた。お前は、このままでいい。まわりにはとても良いピアニストが、コンセイユ(アドバイス)してくれる先輩が、いるじゃないか。と言われたようで、ホッとした。

 嬉しくて、帰ってからエミコにそれを伝えると、心から喜んでくれた。でもそれが、アンリオ先生からの最後の言葉となってしまった。本当に、お会いしに行って良かった。先生は私が帰国してしばらくすると亡くなり、もう二度と彼女の言葉を聞くことはできなくなってしまったからである。

 私はこの後、いろんな友達に送別会を開いてもらったり、先生方にも挨拶をしたりと、忙しい日々を送ることになるが、その前に生徒たちの発表会を開いた。大きな教会で、合同発表会を行ったので、人数は多く、華やかな会となった。私は帰国後、生徒の何人かを友人のミタ氏に引き継いでもらったので、彼はこの会に顔を出してくれて、生徒の親御さんたちにきちんと挨拶をすることができた。ありがとう、ミタ君。彼は生徒たちからも大人気であったため、私から引き継ぎの話が出た時は、皆喜んでくれた。

 そしてその翌々日。私とよっちゃんは、ヨーロッパ生活最後の思い出作りとして、彼念願の、ギリシャサントリーニ島の旅へと出かけることになるのである。

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