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2017年8月 7日 (月)

続編七 新しい恋と、新しい仕事探し

 この頃私は、とっても楽しいが勘が良く、嫉妬深〜いよっちゃんと、とても優しいけれど決定打に欠けるお見合いの君との間で揺れ動いていた。そして時は本番前の不安定な時期。現実逃避するにはうってつけの条件が揃っていた。そこへポンと飛び込んだ新しい風。私は足元からグラっと持っていかれたわけである。

 あくる日、高校時代の彼とどうしても喋りたくなり電話をかけると、彼はパチンコ屋にいた。

「お〜、今、オマエの携帯代、稼いでるとこ。」

 と彼は爽やかに言った。ズキュ〜ン。何だか、めちゃめちゃ嬉しかった。そして思わず私は、デートを申し込む。桜木町へ行って、夜の散歩をした。暖かくて、本当に気持ちの良い夜だった。

 日曜日には、一日彼とデートをした。と言っても、携帯を買いにである。私はついに念願の携帯電話を手にする。これは便利な反面、この先、色々なオトコたちから一斉に電話がかかってくるようになり、非常にうっとおしいものにもなってくる。別に、ただの男友達からなのだが、着信が入ると、その時に一緒にいた彼氏たちの機嫌が悪くなるのだ。なんてめんどくさいんだろう。いや、オマエが悪いんだ、と言う声があちこちから聞こえてきそうだが(その通り。)でも、束縛を思いっきり嫌う私としては、面倒臭いこと、この上なかった。

 高校時代の彼とは、一緒に夜の高校に忍び込み、夜桜を見たりして楽しんだ。桜!私はこの時期に帰国をすることはなかったので、実に五年ぶりの桜であった。感動だった。夜桜は闇に白く光り、夜風が優しく包み、日本の春は何て素晴らしいんだろうと思った。

 そして私は、リサイタルまでの一ヶ月を、ほぼ毎日のように誰かしらとデートしながら、うまく気分転換をして過ごしていた。日記を読み返すと我ながら浮かれ飛んでいる自分に、もっと練習をしなさい、と言いたくなる。でも多分、それが良かったんだろうとは思う。朝から晩まで部屋にこもって、暗く練習ばかりしていたらきっと私はウツになった。そして多分、楽しい演奏もできなくなった。アンリオ先生の言う通り。音楽には、恋が必要である。私に振り回された、相手の男性方には申し訳なかったけど。

 そんな日々の中でも私は要領よく練習をこなし、そして仕事のことも忘れなかった。

 音楽教室に落ちた私は、生徒を集めるために、リサイタルチラシを同封して、市内の全幼稚園宛てに手紙を書いたりして、降園後のピアノ教室の幼稚園導入の売り込みもした。これは一つも効果がなかったのでガッカリしたけれど、思いついたことは片っ端からチャレンジしていた。

 私のリサイタルのチラシを見て、取材を申し込みに来た地元紙の記者とも仲良くなる。地元紙は常にネタを探しているので、私はあちこちから声がかかった。大学の要項にも留学した卒業生の声として載ったりしたけれど、大学には使われてばかりで、仕事には落とされていたので少々腹も立っていた。

 けれど地元紙の影響力は大きく、大々的に記事が載ったことで、生徒の問い合わせが何件も入ったのには驚きであった。別に、生徒募集で載ったわけではないのに、新聞社に問い合わせがたくさん来たそうである。こういうのって、大きんだなあ。などと感心したりしたものだ。

 時は四月半ば。リサイタル一ヶ月前を切った頃から、さすがの私もマズイと思い始め、ここから本腰を入れて練習を始めている。

 私の、帰国後の勝負は、五月十日のリサイタルにかかっていた。これだけ遊んでいて、演奏の方もサッパリであったらもう、全然説得力なんてない。たくさんチケットを売ってくれたコヤマ君たちの顔に泥を塗らないためにも、いい演奏をしなければ。

 そしてリサイタル当日は、ある意味友人たちや、私の男友達やら恋人やらの集結の場にもなったので、別の意味で、母は一人、ハラハラしっぱなしであった。申し訳ない。

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