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2017年8月26日 (土)

続編二十六 シメイへ

 その日の朝ごはんはカフェで、私のお気に入りのオムレツシャンピニオンと、カフェ・グラッセを食べてから、バージバン先生の住むシメイの町へと向かった。

 電車の乗り継ぎ本数が少なくて、すごく時間がかかってしまったが、途中下車したシャルロワの駅で町をブラブラした時に、コヤマ君は私の手をさり気なくつないでくれて、それがとっても嬉しかったのを覚えている。なんて純情な私。

 先生のお宅に着いた私たちは、仰天してしまった。とびきり田舎の、牧草地の真ん中にたたずむ、素朴な一軒家。ここからあそこまでが、うちの庭よ。と言って笑う先生だったが、庭と言うよりはここはもう、広々とした草原。牧場ではないか。何という広大な敷地。一番喜んだのは、北海道育ちのコヤマ君である。その時の私には、彼が何故そこまで大はしゃぎするのかわからなかったが、今ならば理解できる。北海道から本州に移って来た人たちは皆、広い土地と澄んだ空気、それから真っ白な雪が、懐かしくて仕方ないらしい。

 そして夕食。先生の手料理は素晴らしく美味しくて、私は時差ボケで夢見心地の中、盛りだくさんの海老やサラダやデセールをいただいた。先生のフランス語は相変わらず聞き取りやすく、初心者のコヤマ君でさえも少しは理解できていたから、彼女の配慮は素晴らしいものである。先生の旦那様は、お喋りな彼女とは正反対でほとんど喋らない、物静かな方だったが、お二人は大変な仲良しで、こちらから見てもそのアツアツぶりが伝わってくるようであった。私はコヤマ君がいない時に、ここぞとばかりに先生から、私たちの仲について色々と質問をされ、好奇心旺盛なキラキラと輝く目で、愛と運命と未来について語っていただいた。いくつになっても、恋を忘れないヨーロピアンなのである。

 次の日はとてもベルギーらしい曇り空で、朝早くから、私たちは二人で森や町を散歩した。牧場にいた遠くの牛たちが、皆一斉にそろってこちらを凝視していたのが可笑しかった。明らかに、私たちが新参者だとわかっているかのようである。コヤマ君は…夫は、今でも旅行地に来ると朝散歩が大好きなのだが、この頃は手なんかつないじゃってラブラブだったけど、今じゃあ一人で勝手にプラっと小一時間ばかり出て行って、私となっちんは旅館でダラダラとしていることが多い。私は、歩くことの多い夫と付き合うようになってから、ヒールの高い靴は一切履けなくなった。

 そしてこの、記念すべき二人の、旅先朝散歩から戻った我々は、バージバン先生の美味しい手料理に、豚のローティとじゃがいも、それにプラムとクレープをいただいて、ルイ十四世時代の古いエトワールの町に連れて行ってもらい、そこで先生たちに別れを告げて、夕方の電車でブリュッセルへと戻った。

 今回の旅の目的の一つは、ヨーロッパのコンセルヴァトワールを巡るということがあったので、私たちはその翌日、ブリュッセルから少し離れた、リエージュの音楽院も探してから、ベルギーを後にしている。

 お次は今回の旅のシメである、チューリヒへ向かう。そこには私の大学時代の友人が待っていてくれた。

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