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2017年8月24日 (木)

続編二十四 ユリコ、コヤマ君と初対面

 インドから戻って来たユリコと私は、久しぶりに姉妹でショッピングを楽しんだ。一日歩きまわったのでヘトヘトになったが、よっちゃんの誕生日プレゼントに素敵な財布も見つかり、ホッとして、彼女はバイト先へ直行する。

 帰り道に旅行会社から、今度はサベナが欠航になったと連絡が入り、これは困ったぞと、次の案を練る。ちょうどそこへ、珈琲屋の店長から、千円札がなくなっちゃってヘルプの電話を受け、仕方がないので行ってあげることにした。ちょうど、コヤマ君とも旅行の件について相談をしなければならなかったし、私は千円札を何枚か用意して、出向いた。

 珈琲屋の店長はなかなかのハンサムで、マダムたちに超がつくほどの人気を誇る、これまた自他共に認めるプレイボーイだったのだが、私のことも気にいってもらっていたらしい。彼は私の顔を見ると嬉しそうにしてくれたが、私とコヤマ君の間には、先日の一件もあって、何となしに気まずい雰囲気が流れていた。それでもこのお店のメンバーはとても心地よく、私は遅くまで居座ってコーヒーを飲んでいた。

 ちょうどそこへ、バイト帰りのユリコから迎えに来てコールがかかってきたので、駅に近い珈琲屋まで来てもらうことにしたのである。私はいつも実家の年季の入ったボロ車に乗っていたのだが、それはでっかいマツダのバンだったので、マッカーサーの皆にも珈琲屋の皆にも、ミヤチバスと呼ばれていた。Mr.カワソメに至っては、オマエ、塗装屋の娘みたいだな。と言われていた。

 ユリコが店内に入って来たら、不思議なことに、彼女の雰囲気と店の雰囲気とが全く違い、彼女は店内で一人、異色なオーラを放っていた。面白いものである。そして彼女は、コヤマ君と少し喋り、後でこっそり私にこう言った。「お姉ちゃん、あの人カッコイイじゃん。知ってた?ああいうのが、カッコイイ、って言うんだよ?」

 私は笑って、そりゃどうも。私の趣味は今までどうかしてました?と言った。いや、彼らの名誉のために言っておくが、よっちゃんだって、東北の彼だって、なかなかのイイ男たちである。でも妹にとっては、コヤマ君はきっとヒットしたのであろう。そして我が妹の特技は、私の元カレたちと仲良しになってしまうことだった。今でもよっちゃんとユリコはよく会っていると思うし、何故だか彼女の不思議な草食動物的なオーラは、姉とはまた違った雰囲気で、男女共に友人がとても多い。

 それはそうと話は戻って、ヨーロッパ行きの計画は、確実に難航していた。

 私は一人あくせくしていたのだが、始めのうち、私任せにしていたコヤマ君が、そのうちやっと協力態勢に入ってくれた。フランス語を覚えるために、毎日私と仏語メールのやり取りをしたり、旅のルートを練ったり。二人で買い物にも行ったし、ペルティカローリ先生のレッスンにも行った。大学に久しぶりに顔を出した彼は、後輩たちにつかまってモテモテであった。

 レッスンが終わってから、河原で日向ぼっこをしながらフランス語を勉強し、私たちは、本当に仲の良い姉と弟のように見えたかもしれない。私たちの間には、本当に、それ以上のことはほとんど何もなかった。私はコヤマ君と穏やかな関係が続き、そして休みの日にはよっちゃんとも会っていた。

  何もない、平和な日々が続いた。そして、いよいよヨーロッパ出発の日。私は、二年ぶりに訪れるブリュッセルに、心を躍らせていた。

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