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2017年8月19日 (土)

続編十九 珈琲屋での発表会

 二〇〇一年、九月二日、日曜日。

 この日はいい天気で、爽やかな秋晴れとなった。嬉しい。記念すべき、我が教室の、第一回門下発表会である。初めてだから右も左もわからず、プログラムを手作りし、気持ちばかりの記念品を用意して、アットホームな司会進行のミニコンサートを行った。

 朝九時頃から生徒たちが珈琲屋に入り始め、バタバタと忙しくなる。貸切で五〜六十席くらいの店内は、満席となった。忙しくコーヒー豆を挽く音がする。私は写真撮影を、妹の彼氏であるぶんちゃんのお父様にお願いしていた。彼は写真家であり、プロだったのであるが、実に快く引き受けて下さり、お祝いだと言っていただいた。お父様にはその後、私の演奏会のチラシ写真なども撮っていただいたりして、大変お世話になっている。

 そして私の初めての発表会は、コヤマ君の助っ人もあり、順調に進んで行った。

 しかし、司会進行をしながら生徒たちを見守り、その中で自分も最後に弾くということは、ものすごくパワーを要し、大変なことであると、その日初めて私は知った。無事終わった時には、私は精も根も尽き果てて、ヘトヘトになってしまった。

 それでも生徒たちは皆、とても上手に弾いてくれて、子どもたちの本番の強さに感動した。珈琲屋のみんなやオーナーにも、選曲も楽しかったし、生徒たちのレベルも高くて、素敵な会だったと褒めてもらえる。コヤマ君からも、ミヤっさん、ちゃあんと子どもたちに教えているね。と言われ、なんだか嬉しかった。この日、出演した可愛い生徒たちは、アヤカちゃん、サヤちゃん、ショーコちゃん、イクミちゃんたちをはじめ、コヤマ君の生徒さんを入れて十二名。あの時は会場をウロチョロとして幼かった子たちも、今では立派な大人になり、このブログでも読んで笑っているだろう。時間の経つのは早い。そして私たちのソロと連弾も無事、成功して、ひと段落。ドッと疲れが出て、コヤマ邸アパートでの二人打ち上げとなった。

 本番が終わった後というのは、本当に嬉しくてハイになるものである。私たちはワインで乾杯をした。もうピアノはいいよね〜と言っていたのに、結局、二人でいろんなCDを聴きまくり、一休みしてから買い出しに出かけ、ニョッキやおつまみを色々作っては食べた。コヤマ君は料理がとてもうまいので、こういう時、彼もヒョイっと軽く作ってくれる、マメなやつである。私は疲れもあって久々に酔っ払い、いい気分だった。そして彼の部屋のベランダに出て、風にあたりながら、私だけがきっと彼に抱いている想いを、せつなく感じていた。何だか、複雑な心境だった。でもまあ、いいや。とりあえずは無事終わった本番に、乾杯である。

 そして翌日。早々にぶんちゃんのお父様は、写真を焼いてくれて、ぶんちゃんがそれを届けてくれた。とてもよく撮れていて、私は感激した。可愛い生徒たちの写真。小さな会場なので、お父さんはえらく近距離から激写していて、それがまたとっても良かった。珈琲屋の窓辺の緑と、木漏れ日が爽やかに、ピアノを弾く子どもたちと共に絵になっていた。

 それから私は、その中に写っている二枚の写真を見てハッとする。

 そこには私とコヤマ君、そして生徒との、スリーショットが収められていた。

 なんてことのない、普通の写真。

 でもその写真に写った自分たちを見て、私は突然、未来の私たちが結婚をして、我が子である小さな女の子を優しく見守っている、そんな姿がパアッと浮かんできたのである。

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