一時帰国

2017年7月 3日 (月)

百十二 プロポーズ

 私は見合いをしてから一週間ほど日本に滞在し、ヨーロッパへ戻ったんだけど、その一週間はほぼ毎日、彼から連絡をもらい、仕事がある日も早退をして会いに来てくれている。

 最後にプロポーズをされ、「帰って来たら、指輪買いに行こう。」と言われたのだが、私は咄嗟に「え、何の指輪かなぁ」などと言い、はぐらかしてしまっている。

 でも、嬉しかった。そんなにはっきりと、プロポーズなんてしてもらったのはその時が初めてだったと思う。たぶん。そうじゃなかったら、してくれてた皆様、ゴメンなさい。(鈍感な女。)その後私は自分の気持ちを正直に話し(よっちゃんのことは言ってないけど)、ゆっくり考えさせて欲しい、みたいなことを言ったかもしれない。

 冷静に考えると、オイ、そこのお前、もっかい二股かけるつもりか?悪いことは言わないからやめとけ。キミはこれから、またもや色々な男性たちが出てきてややこしいことになるのだよ。と、言いたいところである。が、その時は、好きな気持ちを抱いてしまった相手に、断ることなどできなかった。嫌いなら、話は早かったのに。どうして気の合う相手と出会ってしまったのだろう。私の気持ちは本気で揺れていた。いや、もしかしたら、私は二つの国の間で揺れていたのかもしれない。ベルギーでなら、よっちゃんとの生活は確実にうまくいっていた。でも、日本に帰って来たら?私は、自分自身も大きく変わってしまうであろうことを予感していた。経験してみないとわからないけれど、本当に、向こうでの自分と母国での自分は、違うのである。言い訳じゃないけど。

 出発の前日、私はまた、友人一同に別れの挨拶をした。日記によると、仙台の彼氏や、お見合いの君に、「行くなよぉ」みたいなことを言われていたらしい。今まで全然気づかなかったけど、仙台の彼、ずっと私のことを見守っていてくれたように思う。それに気づかないなんて、私って何て鈍感な女なんだ。

 幼馴染みの二人は、たまたまこの期間に私のお見合いの君と会う機会があって、二人とももれなく、彼をイチオシしていた。こいつらが褒めるなんて珍しい。結婚するなら絶対、彼!みたいなことを言っている。まあ、そりゃあね。将来のビジョンが見えるし、安定は絵に描いたように約束されてるし。わからないこともない。

 そして出発当日。月曜日であったが、お見合いの君は、バリッとスーツでお出迎え。

 成田には朝九時半過ぎ頃に着いたが、あっと言う間に十二時になってしまう。

 最初ははしゃいでいた私も、やはり見送られるのは好きではない。うちを出る時も、ビビがウォーンと鳴いてくれたっけ…。

 飛行機は、一時間ほどのディレイで飛んだ。彼はサベナが飛び立つまでずっと、見ていてくれたらしい。信じられない。うちの夫なら即、お帰りになられるハズである。

 到着はブリュッセル時間の夕方五時。ちゃあんと、空港までよっちゃんは迎えに来てくれていて、私は彼の顔を見るとホッとした。

 久々のブリュッセルは、嬉しかった。そして悪友一同は、私の帰りを、いや、土産話を、待ち構えたかのように楽しみに待っていた。またもや私の複雑な生活が始まろうとしていた。でも、時は三月。ここからは恒例の、試験に向けての苦渋の日々も、始まろうとしていたのである。
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